2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

おもちゃの顕微鏡は使えるか?

出先からなので、携帯から更新します。うまく更新できるでしょうか? 疥癬の確定診断はヒゼンダニの虫体由来産物(ダニまたはその体の一部、卵、その殻)を検出することで行います。肉眼で見のは難しいですが、ヒゼンダニは細菌に比べればずっと大きい(メス…

治療薬:まとめ

いままで4回にわたって疥癬の治療に使われている薬について説明した。解説した薬の中には、疥癬に対して効果が高く、塗る回数が少なくて済んだり、内服するだけで済むなど、患者さんにとっても、スタッフにとっても使い勝手のよい薬がある。それにもかかわら…

疥癬治療薬その4 安息香酸ベンジル

ここ何回か、疥癬の治療に使う薬剤の解説をしてきた。今回はいろいろな施設で使われている割には情報が少ない安息香酸ベンジルについて説明する。 安息香酸ベンジル(あんそくこうさんべんじる:benzyl benzonate) 安息香酸ベンジルはBB(びーびー、以下長…

疥癬治療薬その3 イベルメクチン

今回は疥癬の唯一の内服薬、イベルメクチンについて解説する。 イベルメクチン(ivermectin) イベルメクチンはマクロライドという抗生物質に近い薬だが、細菌を殺す作用はなく、線虫(フィラリアなど)やダニ・昆虫などの神経を麻痺させる作用がある。ヒトは…

第9回 疥癬治療薬その2 γ-BHCとペリメトリン

今回は日本以外の国で疥癬の第一選択薬*1として使われている薬ペリメトリンと、ペリメトリンの登場まで、長い間第一選択薬だったγ-BHCについて述べる。 γ-BHC(がんま・びーえっちしー、またの名をリンデン) γ-BHCはDDT*2の親戚のような化学物質(有機塩素…

第8回 疥癬治療薬その1 オイラックスと六一〇ハップ

前回は疥癬の治療に使われる薬に共通する性質を説明した。疥癬の根治療法に使われる薬は殺虫剤であること、かゆみ止めは対症療法であって、疥癬を治す薬ではないことなど、薬を使用する上で知っておいてほしいことをまとめて紹介した。 今回からは、日本で疥…

 第7回疥癬治療薬に共通する特徴

前回は疥癬の原因となるヒゼンダニの弱点について説明し、ヒトから離れたダニはすぐ死んでしまうので洗濯や掃除は疥癬対策の上で重要ではないこと、最優先課題はヒトの体表のダニを疥癬治療薬でたたくことであることを述べた。今回はヒゼンダニをやっつける…

今日は「疥癬パニックからの脱出」はお休み

今日は5時起きで山に行ってきてへろへろですので、web連載はお休みします。

第6回 疥癬を学ぼう その2 弱点はどこだ?

疥癬に罹ると痒くなるのは、皮膚にヒゼンダニがとりついてアレルギー反応が起こるためであることを前回述べた。今回は、疥癬の感染予防対策の前提知識第二弾として、ヒゼンダニの習性と弱点を解説する。疥癬対策に役立ててもらいたい。 掃除や洗濯より、皮膚…

 第5回 疥癬という病気について学ぼう その1 なぜ痒くなるのか?

前回はあなたの勤務する施設で疥癬が見つかった場合の対処法について述べた。疥癬の患者が見つかったら、最優先で行うべきことは、他にも患者がいないかチェックすることである。患者が見つかったら、治療は医師の役割であるから、この連載では細かい説明は…

第4回 疥癬患者が見つかったら

今回は勤務先の施設で疥癬患者がみつかったら、どのような対策を取ればよいか?について書いてみたい。このお題は現在makikuniが三年計画で実施中の研究テーマそのものなので、まだ十分まとまっているわけではないし、ここに書ききれるような分量・内容では…

角化型疥癬について理解しよう

今回は前回に引き続き角化型(ノルウェー)疥癬について解説する。 集団感染の陰に角化型疥癬あり 前回、普通疥癬というのは一晩一緒に寝るほど親密にしないと感染(うつ)らないと書いた。そんなに感染(うつ)りにくい疥癬がどうして多くの老人ホームで集団発…

なぜ普通の疥癬と角化型疥癬を区別しなくてはならないか?

角化型疥癬と普通の疥癬では、一人の患者さんに寄生しているダニの数が違うから、感染力も大きく異なる*1。普通の疥癬は、一晩一緒に寝るくらい親密な接触をしないとうつらない*2が、角化型疥癬では老人ホームの同室者や介護者に簡単に感染してしまう。だか…

第二回 角化型疥癬を理解しよう その1

疥癬対策に誤解が横行する理由のひとつは、感染力の強い角化型(ノルウェー)疥癬とそれ以外の普通の疥癬(普通の疥癬という医学用語はないが、便宜上こう呼ぶ)があることが良く理解されていないことだ。角化型疥癬と普通の疥癬では対策が大きく異なるので…

番外編ニキビダニ

アップするつもりだった「疥癬パニックからの脱出」のファイルを職場に置いてきてしまったので、今日は番外編としてヒゼンダニ以外の「ヒトに寄生するダニ」について書こうと思います。 ニキビダニ 疥癬はヒトヒゼンダニというダニが、人間様の体表に寄生す…

老性自覚

ウチの大学では基礎上級というカリキュラムがあります。医学部の系統講義が終わり病院実習に出る前の7週間、基礎医学(解剖学とか生化学とか)社会医学系の講座に少人数の学生さんが教員に張り付いて、研究の手ほどきを受けます。実験をしたり顕微鏡をのぞ…

第一回 間違いだらけの疥癬対策

「不潔にすると疥癬になる」「症状がひどければステロイド剤を塗ったり内服させる」「患者は全て隔離する」。さて、○か×か。 こんな質問から始まるamazon:疥癬はこわくないという本を2002年に出版(大滝倫子氏らと共著)してから私のもとには集団発生につい…

 イントロダクション

介護施設で最も警戒されている感染症といえば真っ先に挙げられるのが「疥癬」だろう。患者が出て施設が大混乱、医療機関の受診さえ拒否されたなどという悲惨な例も後を絶たない。疥癬の発生そのものより、疥癬に対する間違った知識や対策の方が混乱の原因と…

 もくじ

「疥癬パニックからの脱出」は2004年にシルバー新報の2月6日号から7月23日号まで連載した読み物記事です。担当編集者の方に掲載許可を頂いて、加筆修正を加えつつ、このブログ上にアップしていく予定です。シルバー新報掲載当時の対象読者は介護施設に働く方…

(序章)

ネット上で「うちの施設で疥癬出ちゃったよ困るよ」という趣旨の書き込みをたまに見ます。文面から集団感染と思われる事例なのに、主たる対策は六一〇ハップとオイラックス・・・、確かに大変だろうと思います。もっと良い解決策があるのになあ。と、もどか…

感想1「ケース検討会」

「はじめての精神科」、読むのを迷われている方は、236ページからの索引をご覧になることをお薦めします。「ICD-10」とか「せん妄」とかの精神医学の専門用語に混じって「気合いで乗り切る」とか「なんでもあり」とかの口語が並んでいます。この索引を見て「…

ブログ試行錯誤

今まで日記を付けようとして続いた試しが無かったのですが、梅田望夫さんのウェブ進化論を読んで刺激されて、はてなでもブログを始めました。 仕事関係のサイトを運営してるbiglobeでブログ立ち上げたんですが、実名で書くか匿名で行くか、まだ立ち位置が定…

ブログタイトルについて

当初ブログタイトルを「疥癬問屋ヒゼン屋」としてましたが、命名者(配偶者A)が「かいせんはカタカナでしょう絶対!」と主張したので変えました。廻船問屋とも疥癬問屋ともとれるところがいいんだとか。彼の案では背中にでっかいヒゼンダニをプリントした法…

ヒゼン屋本店開店

アンケート調査の結果報告のためのページを作成し、更新しました。 http://www7a.biglobe.ne.jp/~scabies 研究助成期間はあと1年で、来年3月までにそれなりの成果を出さなくてはならないので、悩みます。 疥癬