治療薬:まとめ

 いままで4回にわたって疥癬の治療に使われている薬について説明した。解説した薬の中には、疥癬に対して効果が高く、塗る回数が少なくて済んだり、内服するだけで済むなど、患者さんにとっても、スタッフにとっても使い勝手のよい薬がある。それにもかかわらず日本で疥癬に保険適応が認められているのは、使い勝手がいいとはいえないイオウ軟膏だけである。現在、一部の高齢者施設で「疥癬パニック」が起こっている理由の一つが「使いやすい薬が保険でカバーされていないこと」であるのは間違いない。保険が使えないと、自費で治療しなければいけないだけでなく、医療関係者に情報が行き渡らず、現場で対策にバラツキが生じ、混乱をきたす原因にもなっている。日本で保険が使える疥癬治療薬の選択肢が増えるよう、研究者や皮膚科医が行政や製薬会社に働きかけてはいるのだが・・・
 薬を選択するのは医師の仕事であり、疥癬の薬は保険適応外のモノがほとんどなので、医師の裁量に委ねられることが多い。医者にとっては情報不足の中で、今まで使ったことがない薬剤を使うことになるので、気が重い仕事ではある。インフォームドコンセントも必要だ。
 その一方で、疥癬がこわいからといって、γ-BHCなどの副作用に注意が必要な薬を、あまりに安易に使用している施設があるとも聞いている。そのような現場にどうやって情報を伝えるか、も筆者のテーマである。
疥癬の薬は、他の病気の治療薬に比べてややこしいことはあるが、疥癬は有効な治療法があり、必ず治る病気であることを強調して、ひとまず薬シリーズを終わりたい。
[疥癬]