施設で疥癬が発生した場合の入所者記録の重要性

 今回の質問の主旨は「疥癬はどこから来たのか?」ですが、これは疥癬対策の中心となる「感染経路」を把握するための重要な問いです。どのように感染が広がったのか(感染経路)がわかれば、効果が高くて効率的な対策を取ることができるからです。単なる「犯人捜し」では終わらない問題なのです。
 この問いに答えようとするのが、「患者Aはいつ頃からいつ頃までどの程度の感染力があったのか」、「誰と誰がいつどのような接触があったのか」という情報を積み上げていく「疫学調査」です。疫学調査の情報源は、入所者や職員の皆さんの記憶と、日々のケア内の記録です。前述のように疥癬の場合は過去数ヶ月単位の情報が必要になるので、ヒトの記憶に頼るには限界があります。筆者が「疥癬対策には日常の記録が大切」だと思う理由はここにあるのです。