医師とつきあうコツ その3

 今回から本題に入る(やっとかよ!)。言うまでもないことだが。疥癬は病気の一種だから、対策のためには医者の協力が不可欠である。あなたにとっても医者にとっても、時間が限られているのはお互い様である。その限られた時間で最大限の効果を引き出すためには、相談を受ける側の事情を知り、それに合わせた相談の仕方にした方が効率がいいと思うので、以下に疥癬にまつわる医師の側の「お家の事情」をお話しする。 
 その第一として、医者にとって疥癬は診断が難しい病気であるということが挙げられる。本web連載で既に述べたように、疥癬はダニに対するアレルギーで発疹ができたり痒くなったりする皮膚病である。アレルギーで起こっている発疹は疥癬特有とはいえず、他の皮膚病と見分けがつきにくい。そこで診断の決め手になるのが、疥癬特有の皮膚所見である疥癬トンネルだ。しかし、普通の疥癬の患者さんではトンネルの数が少ないことが多く、「全身をくまなく探してやっと一箇所トンネルが見つかる」ということも少なくない。普通の疥癬の確定診断は結構難しいのだ(ダニが桁違いに多い角化型疥癬は対策が大変だが、ダニが多いのだから疑いさえすれば診断はむしろ容易である)。医師が一度や二度疥癬を見逃したからといって、すぐにヤブとは決め付けず、じっくりつきあって欲しい。
 さらにみなさん受診する側が誤診の片棒担ぎをしてしまうこともあるので、注意してほしい。どういうことかというと、「疥癬が心配だから」と診察前にオイラックスなどの治療薬を塗ってしまうことだ。本web連載でも説明したが、安易に治療薬を使用すると、虫体がますます見つけにくくなり、ただでさえ難しい疥癬の診断をますます困難にしてしまう。疥癬の治療薬を消毒薬代わりや、診断が確定する前にフライングで使用するのはやめよう。