介護保険が始まって介護負担感は変化したか?

 今日は疥癬のネタをアップしようと思っていましたが、職場にネタを置いてきてしまったので関係ないネタを書きます。
 アメリカの老年学大学院で一緒に学んだ友人からメールで「2000年に介護保険が導入されて家族介護者の負担感は減ったと思うか?」という質問を受けました(彼女はアメリカでソーシャルワークの博士課程に進んでがんばっています)。
 「う〜ん」と考え込んでしまいました。結構難しい質問です。難しいと思う第一の理由は介護保険導入前と介護保険導入後の介護者は「同じ人」たちではないはずだからです。たとえば導入直前の1999年に介護者だった方々がお世話していた高齢者の多くは亡くなって、当時の介護者で現在は介護者ではなくなっている方が結構多いはずです。また集団としてみると1996年の介護者と、2006年の介護者では世代が10年異なっています。日本社会は大きく変わっているので、10年のコホートの違いは大きいと思います。
 難しさの第二は、介護の負担感はかなり主観的なものなので、社会の家族介護に対する期待感とかに大きく影響を受けるだろうということです。介護保険の導入をはさんで、「高齢者の介護は家族が主として担うべきモノだ」という認識は、「高齢者の介護はたいへんだから介護者には社会的なサポートが必要だ」というものと置き換わってきていると思います。「家族が担うのがあたりまえ」と思っている介護者と、「社会が担うのがあたりまえ」と思っている介護者では、客観的には同じ負担をしているとしても後者のほうが負担感が重いんではないでしょうか?
 10年前私は区役所の在宅介護支援センターに居て、要介護高齢者を支えている同僚の相談に乗ったり、自分でも在宅ケアをされているご家庭に訪問していましたが、今は大学で医学生の教育とか研究とかをしており、「第一線の現場を離れた」感が強く、友人の参考になりそうなコメントはあまりできなそうな感じですが、彼女の質問は私自身すごく興味を持ちました。
 ちょうどそういったテーマで調査している学生さんが来てるので、彼らに情報提供がてら、介護保険をはさんだ導入直後(たとえば2001年)に、同じ介護者の方に質問してみた調査の論文があるかさがしたり、親しくして頂いているケアマネさんにインタビューしたりして調べようと思っています。