経口摂取できない方の疥癬治療

 知り合いのドクターからのご相談を受けました。かなりのご高齢で胃瘻造設した患者さんが角化型疥癬にかかり、ストロメクトールの複数回内服(胃瘻からの投与)により著明に改善したものの、疥癬トンネルが残り、少数の虫体がみつかったというなかなか悩ましい症例でした。この患者さんのように経口摂取が難しい方は、経験的に薬剤への反応があまり良くなく、再燃・再発の頻度も多いです。このような症例は数が少なくて、きちっとしたエビデンスは提示できないので「経験から」しか言えませんが、日本皮膚科学会疥癬診療ガイドライン作成に関わった先生方のなかに同様の意見があります。疥癬治療への反応の悪さの理由として、消化吸収機能が低下しているため、ストロメクトールの血中濃度が上がらず、結果として皮膚に分泌される濃度も上がらないからではないか、と考えられています。内服薬であるストロメクトールは「皮膚の内側から効いてくる」んだと思っています。冒頭に書いた患者さんには外用剤(院内調剤のγ-BHC1%ワセリン軟膏)を使ってみるようにお勧めしました。ストロメクトールの反復投与を避けたかったのと、外用薬は「皮膚の外側から効く」だろうからという発想です。