眼科剪刀

 疥癬の確定診断は患者さんの皮膚に寄生しているヒゼンダニを検出することで行う。ヒゼンダニは皮膚の角層の中に住んでいるので、皮膚の一部を採取する必要がある(ヒゼンダニの検査の為の皮膚採取は患者さんの皮膚にちょっとした傷を付けるので、医療行為になるので無資格の人はやらないでね)。ヒゼンダニがみつかる場所は「疥癬トンネル」なので、検査の際はまずは疥癬トンネルを探す。
 疥癬トンネルらしき皮疹がみつかったら、その部位の皮膚を採取して検査することになる。皮膚の採取にはスクレイピングといってトンネル周囲の皮膚を強めにこすり取る方法*1とか、針で疥癬トンネルをつつき出す方法*2などがあるが、makikuniがよくやる方法は疥癬トンネルをねらい打ちしてはさみで切る方法である。軽く出血する程度、はさみで皮膚を切るのだから当然痛いが、患者さんには「あなたを悩ませている痒みの原因を調べるために是非必要な検査です。もしこの検査で痒みの原因がわかったらよく効くお薬があるので、楽になれる可能性があります」と説明するとほぼ100%の方に同意いただける。
 この際に使用するのが今日のお題である眼科剪刀(がんかせんとう)である。その名の通り、眼科手術などの細かい手術用のはさみで、刃先がまっすぐの「直」と弯曲している「曲がり」がある。疥癬の検査で使いやすいのは「曲がり」の方である。切れ味が鈍くなると、皮膚採取がやりにくくなるだけでなく、検査を受ける患者さんの痛みが増すので、ときどき研いでもらう必要がある。
 手塚治虫の名作「ブラック・ジャック」に、ブラック・ジャック(BJ)のメスやはさみ、BJのライバルのドクター・キリコの鍼を研いでくれる研ぎ名人の出てくるエピソードがある。現在手術用のメスの刃は使い捨て*3で、メスは研ぎに出すことがない。しかし手術用のはさみは研いでもらう必要があり、makikuniもお願いすることがある。

*1:スキーやスノーボードの経験のある人は、滑走面にワックスを塗ってはがす際に使う道具がスクレイパーです、と言えばだいたいどんな方法か想像付くのでは??

*2:私はこの方法はとったことがないのでコツはわかんないです、すんません、

*3:メスの柄(=ホルダー)だけ再使用する