とほほ事例2 上半身にγ-BHC、下半身にオイラックス? その2

 γ-BHC疥癬治療薬の中でも比較的毒性が高く、使用に当たって注意が必要な薬剤である。とは言っても、前述の「上半身/下半身」分割塗りで中毒が防げるという科学的根拠(医学関係では「エビデンス」という言葉が好んで使われる)はない。
 こんな方法をとるよりも首から下の全身に1回、その後1週間後に首から下の全身に1回という標準的な方法を用いた方がよかったと思う。γ-BHC疥癬治療効果に関するエビデンスは、標準的な使用方法で蓄積されてきてたもので、このような独創的な使用方法で効果があるというエビデンスはない。せっかく手間暇かけてγ-BHCを使うなら、思い切って効果が証明されている方法で使用した方がよい。また効果の劣るオイラックスを塗った部位にいたヒゼンダニが生き延びる可能性も否定できない。
 病原微生物をたたく場合、切れ味のいい薬で集中的に、思い切ってたたくのが基本である。これは抗生物質の場合も同じである。たとえば急性の中耳炎などで、医師から痛み止めと抗生物質を処方された場合に、対症療法薬である痛み止めは痛みが治まったら中止してもいいが、根治療法薬である抗生物質は指示通り飲み続けて欲しい(対症療法と根治療法については本ブログで以前解説した)。なぜなら抗生剤で最初に死ぬのは弱い菌であり、抵抗力の強い菌は定期的に飲み続けて血液中の薬剤濃度を維持し続けてはじめて死ぬものだからだ。抗生物質を中途半端に飲んだりやめたりするのは、あなたの体内で耐性菌を作っているようなものだから、やめよう。下痢などの副作用が起きてしまったら、処方してくれた主治医に相談しよう。ちょっと話がそれたが、これも感染症対策上大切なことなので覚えておいて欲しい。
 ちょっと脱線したが、本稿続きます。