再発か新規の感染か?:2に対するお答え

 今回ヒゼンダニがどこから来たか?を施設の視点で見ると、2つの可能性が考えられます。一つは貴施設に外部から新規に疥癬が持ち込まれた場合と、施設内で潜んでいた場合です。現在疥癬は全国的に流行していますので、外部から再度持ち込まれる可能性も充分あります。今年5月に疥癬にかかった方は、昨年疥癬が流行していた時期(終息まで半年かかったということなので昨年5月〜11月まで)にはどこにいましたか?
 施設内で潜んでいた場合は、本連載で何度も述べているように、ヒゼンダニは真寄生性のダニですから、室内の隅っこや、床板のすきまなど環境中に何ヶ月も潜んでいたということは絶対にあり得ません。つまり誰か(おそらく入所者、考えにくいことですが職員の可能性もあります)の体表に少数の(アレルギー性の皮疹が発症しない、またはひどくならないくらい少数の)ダニが生き残っていたことになります。前回の流行時に疥癬にかかった方の治療が不完全だったために、ヒゼンダニが生き残り、再発(再燃)したか、前回の流行時に感染し、ずーっと潜伏期にはいっていて最近発症したということが考えられます。疥癬の潜伏期は約1ヶ月といわれていますが、長い場合には3ヶ月くらいになることもあります。認知症の患者さんなどでは症状を訴えることに困難がある場合は、診断がつくまでに時間がかかることがあるので、半年ほどの間隔を空けて患者が見つかることもあるようです。
 疥癬は麻疹のように一回かかれば二度とかからないという感染症ではありませんので、再感染もあり得ます。二回以上疥癬にかかった症例が、再発(再燃)なのか再感染なのかを判別するには、状況から(疫学的に)判断することになりますが、かなり難しいです(オーストラリアではダニの遺伝子の比較を行っているようですが、再燃も再感染もあるようです)。
 二人の患者さんが同時期に出たということは、どちらかの患者さんがもう一方の患者さんに感染させた可能性が高いので、今わかっている二人の他にも感染が広がっている可能性が否定できません。本連載第四回http://d.hatena.ne.jp/makikuni/20060420/p1を参照して、他にも感染者がいないか皮膚チェックを行うことをお勧めします。